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沈丁花─ 帰郷庵奉賛歌 ─
沈 丁 花作詞・作曲 大西良空
帰郷庵の後ろに植え替えた沈丁花今までお大師様のご高徳を讃えた弘法大師讃歌「大悲の御祖」や、菩薩様の慈悲心の深さを讃えた法舟菩薩讃歌「慈悲の海」、そして、生き仏様のおわします紀州高野山と高野山法徳寺を讃えた高野山讃歌「慈悲のおやざと」など、様々な讃歌を作ってまいりましたが、この度、帰郷庵建立の勝縁を頂いたのを吉祥に、是非帰郷庵の奉賛歌を作りたいと思い、曲想を練っておりました。 いつも最初にメロディが浮かび、後からメロディに合わせて歌詩を作るのですが、今回も、最初に完成したのはメロディでした。 そして、メロディに合わせて歌詩を作ろうとしたのですが、題名が中々決まらず、良い歌詩も思い浮かばぬまま時を過ごしておりました。 しかし、今までの経験から、時期が来れば必ずメロディに相応しい歌詩をお授け頂いてきましたので、今回も焦る心はまったくなく、必ず良い歌詩を授けて下さるものと確信しておりました。 ちょうどその頃、帰郷庵を建立する場所の背後にある法面(のりめん)の石積み工事をして頂いておりまして、石積みが終わったら何か草木を植えたいと思案した結果、前々から境内に植えてあった沈丁花を植える事にしました。 沈丁花にしたのは、別に深い意味があっての事ではなく、前々から境内の土手に沿ってアジサイを植えていたのですが、冬になると枯れてしまうので、一年を通して枯れる事のない沈丁花を少しずつ増やしていこうと計画し、一年ほど前から植えておいた沈丁花を、帰郷庵の背後に植え替える事にしたのです。 沈丁花は、木犀(もくせい)などと共に、甘い香りが人気の花で、菩薩様がお好きだった事も、沈丁花を選んだ理由の一つでした。 沈丁花の花言葉勿論、その時はまだこの花が、帰郷庵奉賛歌の題名になるとは夢にも思っていませんでしたが、ある日ふと「沈丁花の花言葉は何だろう?」と思ったのです。 花言葉(花詞)とは、草花に当てはめられた合言葉や符牒(符号)の事で、草花の色や香り、特徴などから受ける印象や性質を言葉に置き換え、直接相手と言葉を交わさなくても、草花を通して、お互いの気持ちや想いを伝える手段として生まれたものです。 代表的な花言葉を挙げれば、サクラは「純潔」「優美」、梅は「高潔」「忠実」、桃は「愛嬌」、紅葉は「節制」「遠慮」、木犀は「謙虚」「真実」、バラは「情熱」「愛情」ですが、帰郷庵の背後に植える事になった沈丁花の花言葉は何だろうと思い調べたところ、そこには、「不滅、不死、永遠、栄光、歓喜」という、予想もしない花言葉が並んでいました。 沈丁花の名前の由来沈丁花の花言葉が「不滅、不死、永遠、栄光、歓喜」であると知った瞬間、私は、「帰郷庵奉賛歌の題名はこれしかない」と直感しました。 何故なら、帰郷庵は、生き仏であるお大師様、菩薩様と共に、末代までも生き続けていかれる人々の魂が帰る聖所であり、帰郷庵を彩る花は、「不滅、不死、永遠」を花言葉に持つ沈丁花以外には考えられないからです。 そしてその直感は、沈丁花の名前の由来を調べていく内に、確信へと変わってゆきました。 私は今まで沈丁花の名前の由来を全く知りませんでしたが、調べてみると、「花が、お香の沈香(じんこう)と香辛料の丁子(ちょうじ)の香りを併せ持つところから付けられた」とも、「香りが沈香に、花が丁子に似ているところから付けられた」とも言われている事が分かりました。 沈丁花の名前の由来となった沈香と丁子は、仏教では、身心を清め不浄を除くために使われる五香「沈香、白檀(びゃくだん)、丁子、鬱金(うこん)、龍脳(りゅうのう)」の一つに数えられており、その二つが沈丁花の名前の由来だと知り、改めて「これ以上、帰郷庵を彩るに相応しい花は他にない。帰郷庵奉賛歌の題名もこれしかない」と確信したのです。 中国では古くから縁起の良い花として珍重され、「瑞香(ずいこう)」「睡香(すいこう)」とも呼ばれているそうです。 名前の由来は、ある山林の中で眠っていた修行僧が、夢の中で甘い香りがしたので眼を覚まし、周囲を見渡したところ、沈丁花が一面に咲いていたので、僧はこの植物に「睡香」という名前をつけ、後に、これはめでたい前ぶれ(瑞祥)であると言うので、「瑞香」と名付けたそうです。 とても甘い香りがするため、「千里花」と呼ばれる事もありますが、「不滅、不死、永遠、信頼、栄光、歓喜」を意味する花言葉といい、身心を清める五香の沈香と丁子に由来する花の名前といい、縁起の良い花として愛され、「瑞香」「睡香」とも呼ばれている事といい、いずれを取っても帰郷庵を彩るに相応しい花であり、奉納歌の題名にも相応しいと思いました。 菩薩様の絶妙なお計らいこうして、帰郷庵奉賛歌の題名が「沈丁花」と決まり、歌詩が完成したのですが、いまお話したように、最初から沈丁花の花言葉や、花の名前の由来を知って、境内から植え替えようと思った訳ではありません。 たまたま帰郷庵の背後に、何か草木でも植えたいと思い、一年を通して枯れる事のない沈丁花を選んだに過ぎませんが、いま思えば、沈丁花を植え替える事にも、帰郷庵奉賛歌の題名を「沈丁花」と付ける事にも、菩薩様のお計らいがなされていたと思わざるを得ません。 単なる偶然に過ぎないと言われるかも知れませんが、たとえ偶然と思えるような些細な出来事であっても、帰郷庵建立というお計らいの中で起こった一連の出来事である事を考えれば、そこに見えぬお力が働いているとも考えられます。 もしそうだとすれば、菩薩様が、沈丁花の植え替えや、帰郷庵奉賛歌によって、教えようとしておられる事がある筈です。 私たちは、その思いを汲み取り、それを生かす道を考えなければなりません。それは何でしょうか? 思うに、菩薩様が教えたい事は、帰郷庵が、ただ亡くなられた人々のご遺骨を納めるだけの納骨堂ではないという事ではないかと思います。 一般的に納骨堂と言えば、亡くなられたお方のご遺骨を納める場所に過ぎませんが、帰郷庵は、これからも生き仏様と共に生き続けてゆかれる人々の魂が安らぐ聖所であると共に、ご縁者の皆様がご先祖を思う真心(菩提心)を納めて頂く聖所でもあります。 帰郷庵の後ろに沈丁花を植え替えさせたのも、帰郷庵奉賛歌の題名を「沈丁花」と付けさせたのも全て、帰郷庵に帰郷(納骨)される皆様が、これからも生き仏様と共に生き続けていかれる事を、沈丁花を通して教える為だと思います。 高野山法徳寺の御開創に当たり、様々なお計らいを頂く中で、菩薩様の神通力の偉大さやお計らいの絶妙さを何度も目の当たりにしてまいりましたが、この度、帰郷庵の建立と帰郷庵奉賛歌の製作の過程において、絶妙なお計らいを目の当たりにさせて頂き、改めてその思いを深くしたのであります。 合掌 | ||
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ジンチョウゲ(沈丁花) |
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