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一人出家すれば九族天に生まる~中陰供養について~人生の節目としての中陰人生には、誕生と言う大きな節目から始まり、人生最大の節目とも言うべき死を迎えるまで、様々な節目が何度も訪れます。 厄年もその一つで、厄年を迎える時は、節で折れる事のないよう、用心しなければなりません。 しかし、節目は死をもって終わる訳ではありません。 死者にとっては、次の世へ生まれ変わる為の大きな節目が待っています。これが、所謂中陰(ちゅういん)です。 誕生してから死を迎えるまでの人生を、「本有(ほんぬ)」と言いますが、私達の人生は死んで終わりではなく、また次の世(本有)があります。 死は、次の世(本有)への入り口であり、肉体の死は、次なる人生への出発点に過ぎません。 但し、死んですぐに次の世へ生まれ変わる訳ではありません。死んだ時点ではまだ、どの世界へ生まれ変わるかが決まっていません。 この世(本有)と、次の世(本有)の間には、生まれ変わる次なる世界を決めるための準備期間が設けられています。これが中陰です。 本有に対し中有(ちゅうう)とも言いますが、この期間に来世の人生が決まる訳ですから、中陰(中有)は、亡くなった人にとって非常に大切な期間という事になります。 中陰の期間は四十九日間あり、一週間ごとに七回、亡くなった人が生前にしてきた様々な行状についての審判が行われます。 そして、中陰が満ちる四十九日目(満中陰)にいよいよ結果が発表され、生まれ変わる世界が決められるというのが、仏教の輪廻転生の教えです。 この世の出来事に譬えるなら、一週間ごとに弁護士が付いて、よりよき世界へ生まれ変われるよう手助けして下さるのです。 その弁護士に当るのが、十三仏で、初七日が不動明王、二七日が釈迦如来、三七日が文殊菩薩、四七日が普賢菩薩、五七日が地蔵菩薩、六七日が弥勒菩薩、そして七七日の満中陰が薬師如来です。(注1) これらのみ仏は、亡くなったお方が生前に作ってきた様々な行状(功徳と罪業)を調べ、より良き世界へ生まれ変われるよう弁護して下さる訳ですが、その時に大切なのが、後に残った御遺族の皆さんの供養です。 何故なら、後に残った者が亡くなった方の代りに善根功徳を積み、それを亡くなった方に回向する事によって、更に心証がよくなり、より良き世界へ生まれ変われる可能性が高くなるからです。 中陰の供養が大切なのはその為ですが、最近は、亡くなったお方の事よりも、後に残された者の都合を考えて、中陰の供養を簡素化しようという傾向が多々見受けられます。 例えば、中陰の期間が三ヶ月に亘ってはいけないというので、三十五日(五七日)で切り上げる所がありますが、三ケ月に亘るのを避けるのは、「身尽き(身が尽きる)」という語呂合わせから来ているもので、迷信の一つに過ぎません。 中陰は、亡くなったお方のために設けられている大切な期間ですから、四十九日間の供養を怠りなく努めさせて頂く事が大切です。 決して、後に残った者の都合で早く切り上げたり、迷信にとらわれて省略したりする事のないよう、留意しなければなりません。 先祖供養は生き供養中陰は、亡くなったお方の供養の為だけにあると思われがちですが、実は後に残った者が亡くなったお方の死をどのように受け止め、今後の人生にどう活かしてゆくかが問われている非常に大切な期間でもあります。 菩薩様が、 それ故に、死を自らの問題として受け止め、死がいつ訪れてもいいように、心の準備だけはしっかりしておかねばなりません。 勿論、難しく考える必要はありませんが、四十九日間の御遺族の心構えとして大切な事が幾つかあります。 まず一つ目は、四十九日間に限らず、供養全般に共通して言える事ですが、供養と言うものは、あくまで亡くなったお方が生きておられる事を前提として行わなければならないという事です。 何故、仏壇に、御仏飯やお茶湯など、私達が毎日食べるものと同じものをお供えするのかと言えば、生きておられる事を前提としているからです。 菩薩様が、 生きておられるから、食事もされ、お茶湯も飲まれます。季節の果物や頂いたものを真っ先に仏壇にお供えするのも、生きておられるからです。 お線香の香りは、香食(こうじき)と言って、魂を清める為の大切なお供え(食事)であり、お灯明は、亡くなられたお方が迷わずに次の世へ生まれ変われるよう、無明の闇を照らす大切な光なのです。 中陰が明けるまでは、お線香とお灯明は決して絶やしてはならないと言われるのは、その為です。 もし死んだお方を祀っているのであれば、お供えなどする必要はありませんし、仏壇も要りません。中陰供養をする必要もありません。 勿論、私達と亡くなられたお方とでは決定的に違うところが一つあります。それは、亡くなられたお方には肉体がないという事です。 しかし、違いはたったそれだけに過ぎません。 肉体がある世界から肉体のない世界(冥界)へ、生きる世界が変わっただけで、後は今までと何も変りません。 ですから、四十九日間の中陰供養も、その後の日々の供養も、生きておられるという前提で、生きておられた時と同じようにさせて頂く事が何より大切なのです。 供養はただ死者の為に非ず二つ目は、四十九日間の供養も、その後に続く年忌供養も含め全ての供養は、後に残された人々の為にあるという事です。 この事に気付いておられないお方が非常に多いのですが、ご仏壇を見ると、御本尊様もお花もみな、こちら側を向いています。 ご先祖様を供養する為なら、あちら側に向けなければいけない筈ですが、何故私達の方を向いているのでしょうか? それは、お花も灯明も線香も、私達がご先祖様にお供えしているのではなく、ご先祖様から私達にお供えして下さっているからです。 供養されているのは、ご先祖様ではなく、実は生きている私達なのです。 ご先祖様は、お花の綺麗な姿を見せて、「この花のように人の心に潤いを与えられるような人間になって下さい」と教え、周りを照らす灯明を通じて、「人の心に灯りを灯せるような生き方をして下さい」と伝え、一すじの煙となって立ち上る線香の姿を見せて、私達が生きるべき正しい一本道を指し示してくれているのです。 花はやがて枯れ、灯明や線香は燃え尽きて跡形も無くなりますが、それは、全ての命に限りある事を教える為です。 つまり、四十九日間の中陰供養は、ご先祖様からの様々なメッセージを私達の心の奥底に深く刻む為の大切な期間でもあるのです。 「供養は全て、後に残った人々の為にある」と言ったのはその為ですが、この事が分ってくれば、本当の供養とは、心に刻んだご先祖様からのメッセージを、これからの人生に活かしていく事以外にない事も自ずと分ってきます。 供養とは 他人の為にあるでなし 一人出家すれば九族天に生まる自ら功徳を積み、その人生を意義あるものと出来れば、その功徳が自ずと回向され、亡くなったご先祖様の救いへと繋がっていきます。 つまり、供養とは、ただご霊前に灯明を掲げ、香を手向け、花を供え、経文を唱える事ではなく、後に残った人々の生き様そのものが、まさに供養となるのです。 香華灯燭はみな、後に残された人々を導く為の一つの方便であって、み仏の本心は、様々な方便を通して、後に残された人々を導く事にあります。 突き詰めれば、真の供養とは、残された人々が救われる事です。それ以外に、真の供養などありえません。 私達の命は、亡くなったご先祖様の命と深くつながり、私達が救われる事は、ご先祖様の救いへと繋がっているのです。 仏教に「一人(いちにん)出家すれば九族天に生まる」「一子出家すれば、七世の父母(ぶも)皆得脱(みなとくだつ)す」と説かれているのはその為で、ここに供養の真髄がはっきり示されています。 ここに言う出家とは、得度して形だけの僧侶になる事ではなく、在家であれ、出家であれ、心が救われ、人生の生きる目的(使命)に目覚めた人の事を言います。 ですから、「一人出家すれば九族天に生まる」は、「一人救われれば九族天に生まる」と、「一子出家すれば、七世の父母皆得脱す」は「「一子救われれば、七世の父母皆得脱す」と言い換える事が出来ます。 何故一人が救われれば、七代、九代前の父母までもが救われるのかと言えば、人の生命は肉体の死では終わらないからです。 菩薩様は、 ご先祖様が迷ったり苦しんだりするのは、ご先祖様の心が救われていないからですが、そのご先祖様の心と私達の心は、肉体の有無に拘らず、いつも繋がっているのです。 繋がっているからこそ、私達が迷い苦しんでいる時は、ご先祖様も迷い苦しんでおられます。 私達が救われれば、私達と繋がっている全ての人々が救われ、私達が救われた波紋が冥界へと波及してゆき、七代、九代前の父母までもが救われていくのです。 私達が救われる以外に、真の供養はありえない事が、これでお分かり頂けたと思いますが、問題は「ではどうすれば救われるのか?」という事です。 一言で言えば、救われる為には、仏法(悟り)に依りどころを求める以外に道はありません。つまり、悟ったお方に道を求める以外に、救いの道はないのです。先覚者と言われる方々が、一人の例外もなく、仏法(悟り)の師を求めて求法の道を歩まれたのは、その為です。 2017年7月11日 | ||
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紫陽花 |
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(注1)この後、百か日が観自在菩薩(観世音菩薩)、一周忌が勢至菩薩、三回忌が阿弥陀如来、七回忌が阿シュク如来、十三回忌が大日如来、三十三回忌が虚空蔵菩薩と続いていきます。
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