君に遇いにゆくよ

作詞・作曲 大西良空

夏が過ぎて 人影もまばらな
海岸通りの カフェテラスで
君と遇ったあの日の 思い出いまも心に
そっと顔を出して たわむれている
時計の針を 逆に回したら
きっと君に遇える そんな気がして
時を翔けていますぐ 君に遇いにゆくよ
過ぎ去ったあの日を もう一度やり直せるなら  

街灯りが 若いふたりだけを
照らしているような 気がしてたね
甘くせつない夜を 走馬灯のように
連れ去った時間は もう帰らない
誰もがいつか 別れの涙を
流した青春の 1ページなのさ
時を超えていますぐ 君に遇いにゆくよ
走り去った過去を ふたりで呼び戻せるなら

白髪混じりの マスターはいまでも
若い頃のように 気取っているのさ
時を翔けていますぐ 君に遇いにゆくよ
過ぎ去ったあの日を もう一度やり直せるなら
時を超えていますぐ 君に遇いにゆくよ
走り去った過去を ふたりで呼び戻せるなら

心(記憶)と名づけられた現代のタイムマシン

映画「ターミネーター」より

「猿の惑星」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ターミネーター」などに代表されるSF映画の中には、主人公がタイムマシンに乗って過去や未来へタイムスリップする場面が出てきますが、その実現可能性が学問的に研究されている事も事実で、もしかすると遠い将来、タイムマシンが開発されて、過去や未来を自由自在に往来できる夢のような時代が到来するかも知れません。
そうなれば、過去に戻ってやり直せたり、未来に起こりうる事件や事故や災難を未然に防いだり、未来から特効薬を取り寄せて不治の病を治したり出来るようになり、まさに誰もが望む夢の時代が到来する事になりますが、どのような時代が到来しようと、私たちが肝に銘じておかなければいけない事が一つあります。
それは、過去や未来を往復出来るかにかかわらず、それによって人類が幸福になれるかどうかという事です。もしそれが幸福をもたらさないなら、タイムスリップなど出来ない方がいいでしょう。

タイムマシンのような夢の装置が実現出来るか否かは、人類がそれによって幸福になれるか否か、幸福になる為に活用出来るか否かにかかっていると言ってもいいでしょうが、実は、三次元空間を生きる私たちにも、すでに過去にさかのぼる事の出来るタイムマシンが一台与えられています。
勿論、それは、SF映画に出てくるような、形を持ったタイムマシンではありません。皆さんもよくご存知の、心(記憶)と名づけられた眼に見えないタイムマシンです。
生きとし生けるものの中で、記憶をたどって過去へタイムスリップ出来るのは、私たち人間だけかも知れませんが、今まで歩んできた過去の人生を、心(記憶)というタイムマシンに乗ってさかのぼり、もう一度自分の生き方を見つめ直す機会が、私たちに与えられているのは何故でしょうか。
これは大変難しい問いですが、敢えて答えを一つ出すとすれば、過去にさかのぼる事が、私たちにとって幸福なのか否か、つまり、過去という時間は、幸福になる為にあるのか、それとも不幸になる為にあるのかを、私たちに自問自答させる為ではないかと思います。

過去は人生の宝庫である

私たちが歩んできた過去という時間は、人生をより良く生きる知恵がいっぱい詰まった宝の庫のようなもので、その中には、人生をより良く生きるための知恵や体験が、いっぱい詰まっています。
その知恵や体験は、失敗をしては挫折し、恥をかいては冷や汗を流し、人を傷つけては後悔し、裏切られては傷つき、競争に負けては嘆き、様々な喜びや悲しみや感動を味わう中で培われてきたものです。
それは、私たちが進むべき方向を決定付けるほどの影響力を持った、人生の先達(せんだつ)的存在と言っていいでしょうすが、その貴重な知恵や体験が詰まった過去という人生の宝庫を活かせるか否かは、私たちにかかっています。
その過去を、未来に向かってより良く生きる為の知恵や教訓を学ぶ人生の宝庫として活用するのも、ただ悔やんだり、嘆いたり、憎んだり、妬んだり、自分を卑下する為に活用するのも、みな私たち自身なのです。
勿論、心(記憶)と名づけられたタイムマシンが私たちに与えられているのは、過去を見つめて嘆いたり悔やんだりする為ではなく、人類の幸福につながるより良い生き方を見出す為である事は言うまでもありませんが、そのタイムマシンをどのように活用するかの決定権は、私たちにゆだねられているのです。
もし過去に重ねてきた失敗や挫折や過ちを教訓として、より良く生きる知恵を磨く事が出来れば、これに勝るタイムマシンはないでしょうが、活用できなければ、宝の持ち腐れに終わってしまいます。
世の中には、「過ぎ去った過去は、もうやり直す事が出来ないのだから、今さら過去を振り返っても無意味だ」という人もいますが、様々な失敗や挫折や過ちや喜びや感動によって彩られた過去があるからこそ現在があり、輝く未来があるのです。
過去は、現在をより良く生きる知恵や教訓を学び取る学びの場であり、心(記憶)という眼に見えないタイムマシンが与えられている理由もそこにあるのだとしたら、過ぎ去った過去から、より良く生きる知恵や教訓を学び取る事は、まさに人生を幸せにする現代のタイムスリップと言っていいでしょう。