世界に誇るべき「もったいない」精神

2004年に、アフリカ系女性で初めてノーベル平和賞を受賞されたのが、ケニヤ共和国の環境副大臣をしておられたワンガリ・マータイさんと云うお方です。残念ながら、2011年、癌に侵されて、ケニヤの首都ナイロビの病院で亡くなられましたが、マータイさんは、リデュース(過剰生産の削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)という「3つのR」を唱えて環境保護活動に取り組んでおられました。

その運動の根底にあったのが、「もったいない」という日本語ですが、マータイさんが提唱する「3つのR]の意味が、「もったいない」の一語に凝縮されている事を知ったマータイさんは感銘を受けられ、是非この言葉を世界の人々に伝えたいと、各国語に翻訳しようとされました。ところが、この3つのRを一つの言葉で表現出来る「もったいない」という言葉に相当する言葉が、どこの国にもなかったのです。そこで、マータイさんは、「もったいない」という言葉をそのまま使い、世界中の人々に「もったいない精神」を広めながら、植林と環境保護活動に取り組まれたのです。
大自然の摂理に適った感謝と知足の心を、「もったいない」という一語に凝縮させた日本人の叡智に、日本人の一人として誇らしく思いますが、「もったいない」というどこの国にもない言葉を作った日本人が、いま最も忘れているのが、この「もったいない」という言葉に込められた感謝と知足の心なのです。

東日本大震災は、電気や水道やガスに囲まれた暮らしがいかに有り難いかを教えてくれましたが、二万人を越える人々の命と、数知れぬ人々の生活基盤のすべてを奪い去った大震災の体験を、「元の木阿弥」に終わらせないためにも、今までのような、有れば有るだけ使えばいいという浪費と贅沢に走る生活スタイルではなく、必要なだけを使わせて頂く感謝と知足の心が凝縮された「もったいない」の精神を、生活の隅々まで浸透させていく努力をしなければなりません。知足と感謝と節約の心を「もったいない」という一語に凝縮させ、世界のどこにもない大自然の摂理に叶った言葉を生み出した日本人だからこそ、先人の叡智を受け継ぎ、世界の人々の先頭に立って「もったいない精神」を実践し、範を示していかなければいけないのではないかと思います。